2015年09月30日

ブロック2:読み解きノート

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【るいの半生】
明治15年(1882) 伊勢生まれ
明治22年(1889) 7歳 横浜へ移住
  横浜・東京が市になる(全国36市制定。それまでは町村の概念しかなかった)
  大日本帝国憲法発布/大隈重信遭難事件(テロ行為により右足切断)
  パリ万博

明治33年(1900) 18歳 英国人家庭に乳母としてあがる(12年間)
  横浜居留地は山下(関内)と山手(中区)の二ヶ所
  外国人は山下埠頭に商館を立て、山手の住宅地から通っていた
  当時の居留外国人は5000人ほど 中国人に次いで多かったのが英国人
  短期滞在を考えれば横浜港にはこの倍近い外国人がいたと思われる

大正元年(1912) 30歳 スタッフとして乗船(客室係?16年間)
大正2年(1913) 31歳 男との邂逅
昭和3年(1928) 46歳 ホテルで女中頭(ハウスキーパー)になる
昭和7年(1932) 50歳 現在 4年目


【るいという女】
■洋装がすこぶる板についている
昭和7年はまだ着物の時代。
白いカーディガンをはおっている姿(冒頭ト書き)はかなりラフで異色。
上着に袖を通さないスタイルは派手、現代でも日本人には少し勇気がいる。
ホテルに来るまで長年客船に乗っていたことを知った園子の台詞「道理で…」は、
るいの姿勢のよさや堂に入った異質な雰囲気も指している。

■両親が異国人の家庭に奉公にあがることを望んだのはなぜか?
「母など口を酸くして勧めますものを、わたくしがいやがりまして」
るいの親は横浜に出てきて魚屋をやっていた。
当時の居留地にはグランドホテルなどがあり、たぶん厨房に魚を卸していた。
その過程で、娘が異人に雇ってもらえれば将来は安泰だと考えたのだろう。
しかしこの発想はかなり大胆、両親は相当開明的だったということか?
その割には両親の気質を表すような描写がない、という謎。

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「それが急に気が折れまして…近所の娘が男と駆け落ちをしてしまったので」
るいは尋常小学校を出てからどうしていたのだろう?家業を手伝っていたにせよ…
当時の適齢期を考えれば、10代の娘には当然縁談がもちあがったはず。
実際、同じ年の幼なじみは相手をみつけて出奔までしている。

後半の‘男’の述懐
「あいつは確か一番年増で一番不縹緻(ぶきりょう)、そこへきて変に行儀がいい」
つまりるいはブスだったのである、というか親はそう認識していた。
縁づき先を探す余裕がなかったのか、娘の女としての幸福を早々と諦めてしまった。

るいは容姿がコンプレックスになり、物堅くてまるでコケットのない女になった。

※るいの話はあっちへ飛びこっちへ飛び、それこそ波のうねりのように変化に富む。
「姉妹のようにしておりました、近所のお初さんという娘(こ)」の話など、一見
蛇足のように思える。

が、作家がこの短編の中でわざわざ字数を割いている以上、そこには意味がある。
いや、むしろこういうところにこそ物語の核心を突くものが仕込まれている。
そこを見逃さずに食いつけるかどうかで、解釈は作家の正解に近づいていける。


【英国人家庭でのるい】
■18歳から30歳までの一番華やかな時期を、るいは異人の家庭のみで過ごす。
これはるいの人間形成に決定的な影響を及ぼしている。
乳母としてあがった銀行家のクレプトン家は奥方がイギリス貴族、
るいも英会話は元より、使用人の心得や振舞い方などを徹底して仕込まれたはず。

■初めて見た外国人の女児は天使のようにかわいらしく映ったことだろう。
るいは8歳のカザリンお嬢さまに魅了され20歳で帰国するまで夢中で仕えた。
「その間どなたからも叱られたということがない、これは私の自慢になりますか…」
叱られたことがないのはカザリンでありイコール乳母の自分もということ。

■るいは日本人の男と身近に接することのない12年間を送った。


【園子の(微かに笑う)の謎】
■園子が聞きたいのは、るいが独身である理由と女としてのこれまで。
「お嬢さまが大きくおなり遊ばす間に自分も年をとることを忘れていた」
このるいの発言を聞いて園子はなぜ笑ったのか?

出てきた解釈は、‘そんなわけないだろという嘲笑’というものと、
‘夢中になったら一直線になるるいの性質への軽い驚きと納得’
という二つに割れるが、これはどちらもアリ。
いずれにせよるいのパーソナリティが常識の枠外にあることが判る反応であり、
園子もそのキャラクターを左右する女性としての成熟度合いが垣間見えるところ。


【マルセイユ行きの船上でのるい】
■「お嬢さまのお伴という大役を仰せつかって、船では夜もろくろく寝ずじまい」
夜もろくろく寝られないというのはどういう状況か?
‘これは自分がいかに有能であったかという「盛り」が入った自慢の台詞’
‘お嫁入り前のお嬢さまに悪い虫がつかないように気が気でなかったという善意’
‘るいは必要以上にいっしょうけんめいになってしまう人’

講座ではシニカルな解釈がよく飛びだす。
読解にはその人の価値観や人生観が現れる。
受講者は未知との遭遇に驚かされることしきりな様子。

■「その船で日本へ帰って参ります時は、精がなくて精がなくて、つい涙が…」
るいはなぜクレプトン家を辞めて船で働く気になったのか?
今の邸宅には主夫妻が残るのみ、自分の情熱の受け皿になる環境ではない。
手塩にかけたカザリンが帰国したことで燃え尽き症候群のようになった。

■るいは大海原の上で本当の‘独り’になる。
英国人の家庭という閉ざされた一点の、対極にある広い世界を初めて知る。
日本の男たちが目の前に立ち現れたのも人生で初めての経験。


【るいを理解するポイント】
■「船の仕事は荒うございましたが、一番、人様のために尽くし甲斐のある気が
いたしました」
この台詞がるいの真骨頂。
るいは人に必要とされることを生きる希望にしている。

※表現としても、この台詞はもっとも力を入れるべきところ。
特に「一番」の前後に句読点が入っている意味を正確に捉えなければならない。


【るいの今】
■「ほんとに海上生活って申すものはよろしうございますね」
船は勝手に自分をどこかへ連れて行ってくれる。
命がけの緊張感と目的地に向かう高揚感がない交ぜになった充実が常にある。

■船上生活にくらべて今の自分は、
「望みがないものには行く先のあてでもなければ、その日その日が真っ暗…」
「こうしていても明日のことは考えようにも考えられない」
るいは孤独、帰る家もなければ迎えてくれる人もいない。

これに関しては受講者から、この気持ちはよくわかるわ〜という意見が出る。
誰かの妻、誰かの母でしかないまま三度の食事づくりに追われるだけの生活は、
明日もあさってもずっと変わらない、このまま終わるのかと思うと気が萎えると。
当時の感覚ならるいも自分はもう老境だと思っていたはず。
海上生活ならまぎれていく不安が、陸上の定点ではしょっちゅう意識されてしまう。

■るいは読み手が思う以上の諦観と切迫感に揺れているのかもしれない。


【るいが肥っている意味】
■岸田國士がるいを肥った女に設定したのはなぜだろう?
昔のままの姿だったら‘男’にはひと目でるいだと分かってしまう。
‘男’の認識を曖昧に書いているのは、秘められた過去の重さを劇的に見せるため。
るいと‘男’の再会は意図せぬ偶然、でなければ物語の衝撃度が薄くなる。
作家がこういう仕掛けをしている以上、‘男’は例の事件の当事者ということになる。

また、時間の残酷さ、長さが浮き出て、るいが人生の終盤にいることが分かる。
7歳から50歳までの女の一代記といったスケールの大きさが航海のイメージと重なる。

■るいはいつから肥ったのか?
‘綱に脚をとられて肋骨を折り退職した、その入院がキッカケ’
‘クルーズではやることがないから船に乗っていると肥っちゃう’という体験談。
そこから思いがけない解釈が。
‘そもそも、肥って動きがもたつくようになったせいで綱にひっかかったんじゃ?’
今回一番の爆笑ポイント。


【役づくりのコツ】
ブロック2は比較的難しい解釈を必要としないため、表現方法の具体についても
突っ込んだ講座内容になった。

・台詞は「サンドイッチ」で表現する
・きれいに読もうとする自意識を捨てないと役の心情は伝わらない
・自分の解釈に固執しないこと、反面、仮説はしっかり追うこと

また、このホンは想像以上に笑えるポイントがたくさんあることも発見。
それも表現の仕方如何で、活かされもすれば殺がれもする。
笑いは人間が求める感動の最たるものの1つ、積極的に拾って表現するべき。



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今回は男性にもるい役を読んでもらったのですが、男性が読む女性役には独特の
あたたかみやまろやかさが出て面白いですね。

むしろよっぽど女性らしさを感じられたりもして(笑)
女優がしぐさを学ぶなら女形から盗むのが一番だと、常々私は思ってきましたが、
それに近いものを感じます。

すでに読みだけでは飽き足らず、実際に動いて演じたいなんてご要望も上りつつ、
次回は『顔』の一番目のクライマックスシーンへと入っていきます。

おとなしそうに見えてこの物語、演ずるには思う以上の熱量が必要だということが、
次回でわかるかナ。
男性役にとっても、実は核になるシーンですからね、次回は逃せないブロックです。

自分を傷つけた男を恋しがるなんて反転が、女心には本当に起こりうるものなのか。
『顔』とは何を意味するものなのか。

そんなあたりを予習しておいていただければと思います。






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2015年09月23日

ブロック1:読み解きノート

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海浜の寂れたホテル。

訪れたのは、男(45,6)と女(28,9)。

男は苦学生あがりの役人とでも言いたい風貌。
女は素人風をした商売女、と言えば言える感じ。
二人は夫婦のようにも、夫婦でないようにも見える。

先客は、土屋園子(38,9)と京野精一(21)。

園子は、現代風の好みを利かせた洒落た和服姿の、歌を詠んでいるらしい女。
東京の本宅に息子を残して、このホテルの常連になっている。
京野は子爵家の御曹司、体が悪いということで静養に来ている。
二人とも長逗留している組だが、まだ話したことはない。

ホテルには女中頭のるい(50)がいる。

この物語の登場人物は5人。
舞台はだだっ広い日光室。
正面に大きな窓、右手に客室へ上る階段と蓄音機、左に外へ出る扉と窓。


【ホテルに滞在できる人々】
現代とは違って圧倒的な格差があった時代。
ホテルに長逗留できるような人種はそう多くはなかった。
この物語の登場人物はみな裕福、労働者はるい一人。


【男について】
■前身は火夫(かふ・船のボイラーマン)
―― 広野八郎日記より(昭和3年から四年間、火夫見習いとして秋田丸に乗船) ――
「船員たちの生活が如何に惨めで,放縦で捨て鉢なものかという事を痛感しないではおれない.
航海中汗にまみれ,真っ黒になって働いた其の報酬は,全部遊廓か船員相手の飲み屋,カフェーか
淫売屋,そうした享楽と本能欲のために,子供が花でもむしって散らかすように消費してしまうのだ.
そして貰った給料のみかナンバン(火夫長)から,驚くなかれ月1割5分というとても陸では想像も
つかない高利の金を借りて使うのである.
しかし,そうした気持ちになる彼等の心理がわかるようにも思う.日頃の満たされぬ惨めな生活を
癒してくれるのは,油と石炭の粉に汚れた身体を抱き,石のように固くなった手を握ってくれる女と,
苦しい労働も疲れた身体も海上の暴風雨も忘れさせ,麻痺させてしまう酒とよりほかに何があろう.」
火夫は最下層労働者。日当制。

■現在は税関吏(役人)に出世している
転勤がつきもの。現代でも函館・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・門司・長崎の8港に本部がある。
キャリア組は2,3年に一度の割合で財務省や全国の税関、海外勤務とさまざまな場所への異動がある。
女の台詞「あなたってどうしてそう方々をお歩きになったの?」はこの職業に対応。

■女はまだ男の生活のこまかいところを知らない。
夫婦?になって半年か、長くても1年ぐらいだろうというのが大方の受講生の意見。

■男はたぶん初婚。
この地位まで上り詰めるのに必死でやっと結婚する余裕ができた。
若い頃の三國連太郎や吉田鋼太郎のような肉体が説得力を持つ昭和の男のイメージ。


【女のキャラクターについて】
腹にあることをぜんぶ言う女。
それを無教養ゆえととるかお嬢さまととるか
(総理令嬢でも田中真紀子みたいな人もいるし)

‘素人風の商売女’とはどういう人物なのか?
男の台詞「おまえはまたどうしてそう何処も彼処も知らないんだ?」から、
女が狭い世界しか知らないことが解かる、これがポイント。

■男の家の女中だった
田舎から出てきて玉の輿に乗れて夫にふさわしくなろうと頑張っている。
化粧も頑張りすぎてケバくなり、それが商売女に見えるという説が出て座内爆笑。

■カフェの女給
もっともスンナリ入る解釈。
世間知には長けているはずだが稼ぐのに必死で旅行などもしたことがない。

※女中説も女給説も、やっとここまでになった男が選ぶ女なのか?
ということに疑問あり。

■上司、あるいは仕事関係の相手の娘
28,9は今でいうアラフォー。
(当時の精神年齢と人生のスピードは現代の10歳増しぐらい)
10年も行き遅れているということは、女は出戻りかも。
叩き上げの男ならもらってくれるということから世話された話なのでは?

※どの説も決定打としては弱含み。
逆に言えば、女は役者によっていかようにでも演じられる役だということ。
女の前身によって男の人間性が決まるため、配役のポイントが高い。

※女は登場人物中でもっとも健全に見える、一人だけ異質。


【京野精一について】
■療養という名目で逗留しているが、実際は病気ではなさそう
ex.煙草を吸う/酒を飲む

■子爵家の体面にかかわる何かをしでかして、家から遠ざけられているのでは?
ほとぼりが冷めるまでという感じで隔離されている?
「お邸のかたがしょっちゅうみえる」のはチェックに来ているのでは。
海浜のホテルということは街から離れた、人もめったに見かけないようなところ。

■本人の指向と家格にズレがあり、鬱屈を抱えている感じ
ex.「賑やかなことがお好きそうでいらっしゃる」/レコードをジャズに変えさせる
‘精一’という名は長男の証、昔は「一」の字は嫡男にしか付けなかった。
名家の御曹司としての苦しみがありそう。

■ひと回り以上年上の園子に接近するあたり、女慣れした放蕩息子っぽい

■美形であるのは間違いない
染谷将太、高良健吾などの名前があがりつつ、綾野剛で悲鳴が、、(笑)


【土屋園子について】
自分のことを語らない謎の多い人物。
夫は勤めていて息子もいるのに、ほとんど東京の家に帰っていないのはなぜか?

■園子が坊やと呼ぶ息子の年齢はいくつぐらいか?
「ああいうの(京野)のようにさえなってくれなければ」というつぶやきから、
15,6歳という説と、「坊や」の語感から5歳ぐらいという説に分かれる。
5歳児ならなおのこと、それを置いて旅暮らしをしている立場が理解できない。

■夫が妾宅に入り浸り?
でもそれではむしろ子供と結託して家にいそう。
■園子本人がおめかけさん? 子供だけ本宅に取られた?
が、妾なら旦那がいつ来てもいいように家から出られないはず。

■「ああいうのにさえなってくれなければ」
実はこれは息子ではなく、年の離れた弟のことなのでは?
この台詞は京野と実際に話す前に口にしている、
ということは園子は京野という人物を知っていたことになる。

京野の「小倉三郎君のお姉さんでは?」という発言のほうが真実なのでは?

■ひょっとして、園子の話すことはすべて作り話?
旅先でならいくらでも自分を偽れるし、プライバシーを明かすには抵抗もある。
子爵の御曹司という京野に対して、「と、称してるんじゃなくて?」と、
この切り替えしの速さが異質、それは自分もそうだからすぐこう反応したのでは?

■もしかすると園子も家から追われた身なのでは?
「人を気狂いにしてしまうっていうのは便利ですわね」という発言をしている。
歌を詠む芸術家肌な側面が理解されず、あるいは教養が勝りすぎていて、
婚家から疎まれて気狂いあつかいされ、経済的保障だけされて追い出された?


【あの夜の出来事について】
■男はこのホテルに来た初めから、るいがあの女だと気づいた
■男はこのホテルは二度目、るいのことを確かめにきたのでは?
そんな折に女房づれでくるだろうかという疑問も出る。

■男にとってもるいは初めての女だったのでは?
火夫をしながら船蔵で英語の勉強をしていた21歳が女遊びをしているとは思えず。
他の女性乗組員には興味がなかったのに、るいの名だけはずっと忘れなかった。

■この男はあのときの火夫とは別人なのでは?
とするなら「あの女は昔の俺に、火夫の俺に会いたかったと言うよ」とは?
この男には珍しい唯一の叙情的な台詞、岸田がこれを書いた意味はどうとる?

■最大の疑問は、るいが自分の年齢を把握していないこと
ト書きには明確に50歳とあるのに数行先で現在55歳ぐらいと自己紹介している。
ロマンスの昔がたりの中でもるいは年齢を4つぐらい上方修正している。

※二度も出てくるということはここには何か意味があるはず。

■るいのロマンスも作り話なのでは?
現実はもっと味気なくあっさりしたものだというアイロニーがテーマ?
るいは、では、本当におかしくなっているということなのだろうか?



---------

落としているところがたくさんありそうですが、ひとまずのまとめということで。
何か気づいたらコメントしてください。

謎解きの答えがさらなる謎を呼ぶ、刺激的な時間でした。
人が考えていることって面白いですよね〜、
みんな真剣にやってるんですけどしょっちゅう爆笑がおきる若々しい教室です。
(笑)

さてさて、今週はぐっと核心に迫っていくことになりますが、どうなりますか。
CDに焼きましたので、次回はタンゴの音色から始めましょう♪









posted by RYOKO at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 『顔』を読む! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月21日

二つ目の港はパッショネイト!

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本読み教室第二回が終了しました。

この『顔』という戯曲にはト書きによくタンゴが出てくるので、
頭の中はすっかりそんな風景に。

主人公のるいは、ホテルの日光室の蓄音機でレコードの番をするのも仕事のうち。

過ぎし日に乗っていた客船でよくかかっていたのかもしれません、
彼女はいつも目を瞑って、同じタンゴに飽きもせず聴き入っているんですよね。

昭和7年の欧米航路なら、かかっていたのはコンチネンタルのほうかもだけど、
いいなあと思った編成のピアソラの曲をみつけたので、張ってみる♪


タンゴのリズムを聴くと、あの独特の脚さばきが浮かんできます。

それはさながら、この『顔』に出てくる5人の男女の運命の絡み合いのようで…
るいは目を閉じて、何を思い出していたんでしょうね。


二回目の教室も、ある意味タンゴのごとくでしたヨ。
ハァッ!と驚くような解釈が、まあー出るわ出るわ!(笑)

みなさん敢然とおうち読解を進めていらした成果が、
さっそくあふれ出たのですネ。

一人で考えていては到底発想できない鋭い説がいくつも立ち上がってきて、
土曜の夜クラスなどでは、
このホン、思った以上のとんでもなくミステリアスな物語なのかも!と、
興奮のるつぼに。(笑)

ひとつのホンを大勢で解釈する楽しさ、素晴らしさは、
こういうところにあるのです。

前の日まで見も知らなかった人々と、真剣に、
こんなディープなディスカッションを繰り広げるのですから、
思えばかなりユニークな場ですよね。

自分がどんな人間か、人はどれだけ違うことを考えているのか、
つぶさに体験することになる。

物語の謎解きの旅は、おのずと自分に出会う旅ともなっていくのです。


次のクラスでは、タンゴを聴いてみるのもよいかもしれませんね。

岸田國士がわざわざ書いているのですから、
『顔』の世界観は、あの情熱的でセクシーなせつないムードで彩られている、
ということでしょう。

そうね、るいは意外にも、ホテルにやってくる人生たちを、
こんなにゴージャスな陰影深い大人のまなざしで眺めているのかもしれません。

上に貼り付けたYouTubeを飛ばした人、さあさあ、お聴きになってみて。(笑)



うれしいことに、今日になってまた新しいご応募がありました。
ありがとうございます。
青空文庫で読めるので、旅には十分に間に合います。

ようそろう。
天気晴朗にして波高し。

白い航跡もあざやかに、船は紺碧の海原を快走中です。






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2015年09月14日

本読み教室、出航しました♪

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秋になりました。
というわけで、ついに迎えた本読み教室の初回は、
おかげさまで無事大成功でした。

そう、大成功って言っていいと思うんです。
だって、受講生のみなさんが次も来るって言ってくださったから(笑)

いい時間でした。
それぞれのキラキラしたお顔が頭からはなれません。

みなさんキレイだった〜。。
こころにとても清らかなものをくださって、
どうしても気分が浮き立ってしまう現在です。


テキストは、岸田國士の『顔』という作品です。

ちょっと特殊な構造を持っているので、
たぶんほとんど上演されていないんじゃないかと思いますが、
逆にこういった読解にはうってつけの、
人間の深層心理のひだが幾重にも書かれた大人のホンです。

何より、岸田作品には珍しくロマンにあふれたスケールの大きい物語、
というところが選定の決め手になったのでした。

記事の扉に客船の写真を選んだのもそのせいです。
そうしてなかなかに色っぽいお話でも、あります。

昭和七年の作品ということで、「ゐ」とか「さう」とか「云つて」とか、
見慣れぬ表記がずらりと居並ぶ台詞を、
みなさんには初見で声にしていただきました。

でも、よくしたもので、今回の教室は受講生さんの年代が幅広くなったため、
人生の先輩方がすらりとお読みになる音がガイドになって、
若いみなさんもあまり引っかかりもせずに上手に読みこなしていけました。


台本は、初見では何が書いてあるのかちんぷんかんぷんなのが普通です。

あたしも初めて読んだ際には、なんだこのホンちっとも面白くない、と、
よく思います(笑)

ところがこれが、二度三度四度と読んでいくうちに、突然ハッ!と、
目の前に大きな魅力が立ち現れるのです。

これはもう魔法。
大転換です。
この瞬間を味わっていただきたくて、テキストの情報は伏せていたのですね。

次回までの一週間で、一人、また一人と、
この隠された黄金の扉をみつけるかたが、日々増えていくことでしょう。

がんばって読んでね。
自分で発見したものは、すべての核になっていくから。

それにしてもみなさん、凄い集中力でしたね〜。
みずからやると決めて臨んでいる人には、気を散らす隙間はまるでないのですね。

そうして、誰一人として同じ声のない、そのバリエーションの豊かさたるや。。

みなそれぞれを歩いていて、その人生がここに座っている。
そういう感じでしたね。
うつくしい時間でした。

体験受講のかたが継続をお申し出くださった、あれは本当にうれしかった。。
また、パック制のかたは何回受講してもOKなんですが、とはいえ週一だろふつう、
と思っていたら、

毎回でる、って言って本当に来てる受講生さんもいらして、
さらにその彼女に触発されたみなさんが続々あとに続こうとしていて、
ま、まじっ?!どっしぇ〜(◎o◎)/

うれしい悲鳴です。
ん?こうなるとあんまりクラス分けの意味も、なくなったかも(笑)


正直、みなさんが…いや実際に全員ですヨ、こんなに熱く向かってくださるとは、
けっこう本気で驚いています。
その姿がキレイできれいで、何かに似てるなあとずっと感じてたんですけど、
わかった。
なでしこJAPANだ (笑)

いや冗談抜きで、早くも自慢の受講生さんたちになってます。
なんて有り難いことでしょう…
ほんとにね、誰に感謝したらいいんでしょうね、こまっちゃいますよ。えへ(涙)

こういうふうに、見知らぬ方と応募という形でご縁を結ばせていただくと、
人にはそれぞれバイオリズムとかタイミングがあることがよくわかります。

今もおひとり、もう何日も前から何度も受講を希望してくださっていて、
そのたびお返事をさしあげるのですが、なぜだか連絡のラリーが続かず、
いまだ宙に浮いたままの男性もいらっしゃるのです。

ふしぎだあ、普通に返信しあってるのになぜお互いに届かないんでしょう???
いま募集中の回でしたら、もうどこでもいいので急にいらしてください(笑)

片や…スムーズに受講の手続きを済まされながら、
今回の関東の水害でご実家が被災され、支援の帰省でやむなく第二回からに、
とご連絡をくださった男性もいらっしゃいます。

どうか大切なみなさんがご無事でいられますように、
そうしてお元気にこの教室でお目にかかれますように、心から願っております。


教室は次回から、こまかな解釈に入っていきます。

あなたが感じたこの物語の感動点と、登場人物のパーソナリティを読んできてね、
とお題を出してあるので、どんなものが飛び出してくるか本当に楽しみです。

第二回に体験受講のかたもいらっしゃいますし、
ここからが本格始動という感じですね。

私の持っている何かをひとつでも多くさしあげられたらいいですね。。

さああたしも、明日からもっともっと読まなくちゃ。
励みましょう、みなさん。





















posted by RYOKO at 00:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 『顔』を読む! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする